溶接不良を発生させた原因は、鋼材を一体化するときの接合方法が従来のリベット接合から、溶接に変わったことだった。真っ赤に熱した鉄の鋲(リベット)を鋼材の穴に差し込み、抜けないよう鋲の頭を叩きつぶして構造を一体化させるリベット接合は、強度については文句ないのだが公害問題になった。かつてのビル建築現場に鳴り響いていた、ものすごい金属音をご記憶の方も多分大勢いるだろう。そのすごい音が騒音公害だと問題になり、しだいに溶接が鉄骨接合の主流になっていった。
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つまり、先の「千代田・告発書」で問題となった溶接不良の欠陥ビルの発覚は、ちょうどそんな過渡期にもあたる。もちろん溶接接合でも、鉄骨溶接の技術をきちんと熟知した職人が施工にあたっていれば問題は起きなかった。ところが、ノウハウをもたないまま、誰も彼もが公害を避けて騒音を立てない溶接に切り換えたのだからたまらない。リベットなら鋲の頭を締めれば誰がやっても確実に構造が一体化するが、溶接の場合では、一見溶けてつながったかに見えても、中までは溶け込んでいないケースがほとんどだった。融合したのは表面のみで、内部は分離したままなのだから、大きな地震でも来たらひとたまりもない。一方、鉄骨構造を溶接でやる意味とは、接合部分をしっかり中まで溶け込ませることで構造全体がまさに一つの鉄骨となり、だからこそ高い強度を発揮できるということなのである。