過去の判例による確立

2011.11.14

転勤について「余人をもっては容易にかえがたい」という企業の主張が、そのまま受け入れられなくなっていることは過去の判例によってすでに確立している。そこで企業は名古屋営業所のK主任を広島営業所に人事異勤し、Yを名古屋営業所に転勤させようとした。そして、Yが同様の理由で単身赴任を拒否したので、大阪営業所のMを名古屋営業所に異動し、Yを業務命令違反・職場秩序素乱を理由として懲戒解雇処分にした。最高裁判所は、労働契約でYとの間に企業が勤務場所を大阪に限定するという合意をしていなかった以上、Yへの転勤命令は人事権の乱用ではないとして、この判決を大阪高等裁判所に差し戻して再審判を命じた。

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この最高裁の判決の中身は、単身赴任者事件の諸判決についてのそれまでの傾向と同じであって、そのなかには父親が倒れて数匹の乳牛を妻とともに世話をしている社員に単身赴任の転勤を命じて、拒否した社員を懲戒解雇した事件を正当とした判決もある。この東亜ペイント事件では、大阪地裁・大阪高裁の懲戒解雇無効の一審・二審の判決を最高裁が却下・差戻しにして従来の判例の傾向を再確認したところに特徴がある。時は戦後第2期に入ったばかりの時期であり、日本の裁判所が、社員の家庭生活の事情をかえりみず、企業の人事権を強く保護することに衝撃を与えた判例になった。この最高裁判決は現在も裁判所の判決判断の基準になっている。