ローン地獄に陥った

2011.04.12

「あのねえ」「だから何よ」そこでかちかちと音を立てていた手を止めて、こちらを向いた。―げっ、さっさと言い出せばよかった。「エステなんだけど、やっぱり今のコースに種目を入れたの」「ふうん」―ここまではいいんだよ、ここまでは。「で?」「うん……それでねっ、やっぱりねっ、うん」「お前、もしかしてコース追加したの」彼氏は一変して鼻息を荒々しくさせると、襟足を雑に掻いた。これだけ毎日一緒にいるから勘だけはいいらしかった。「やめろって言っただろう」まだうんとは言っていなかったが、彼氏は力が抜けたようにがっくりとうなだれて、鼻から溜息をもらした。私は彼氏の前に立ちつくしたまま、唇に力を入れて口をつぐんでいた。これからお説教がはじまるのは分かっている。もしかしたら契約を破棄しろと怒鳴るかもしれない。「自分の収入を考えてごらん。いつも仕事でやっているんだから、分かっていることでしょう。自分の年収よりも借金のほうが上回ったらどうなるのか、一番お前が分かっているでしょう」椅子に腰かけてこちらを向いたまま、彼氏は眉をしかめて口を尖らせた。「きりがないじゃないか。また新しいコースを取ったって、また途中で効果がなくなったり、勧誘されたりするぞ。そうなったらいくらの借金になっていると思っているんだ!いつもそういう人の相談に乗っているんでしょ?あなたは」今度は怒り狂ってそう言うと、そのあとは言葉も出てこない様子で、彼氏は尖ったままの口に手を当てて私をにらんだまま、何かを考えているようだった。私の心臓は石のようにかちこちに硬くなって、息を苦しくさせていた。もうどうしようもなかった。何もかも分かっているというのに、こうやってはまっていく。分かっているのにそれでも痩せたい。「何を言ったって、自分がそうしたいならしょうがないだろう」今度は沈んだ声でそう言うと、彼氏は小さく溜息をついてまたパソコンをはじめた。ここで何を言っても、彼には言い訳にしか聞こえないと思った。だから私は彼氏に背中を向けたまま、ただ黙っていた。―言っていることは分かる。分かるけど、どうしても痩せたいの。彼氏の言っていることは、紛れもなく正しかった。でももう、引き返せないところまで来ている。約55万円のローンはあと何年も残っている。そして追加したサイズダウンのボーナス一括払いは、来月にくる。そしてサイバーケアの支払いも、来月からはじまる。だからまだ借金はほとんど残っているというのに、私はもっと増やそうとしているのだ。ここまで来て、私はやっとRさんたちが言っていたことの意味が分かった。どこかで私は彼女たちみたいにはならないと、自負していたのだ。しかし私も同様にローン地獄に陥ってしまった。
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