庭を見ると、神をまつったような祠があり、小さな炎がゆらめいている。闇が近づくにつれ、炎はひときわ鮮明になり、まわりに太い光の輪郭が浮かびあがってくるのが美しい。空気も濃密になってくるようだ。インドネシアには、イスラム教、ヒンズー教、仏教のほかに、精霊崇拝でもあるアニミズムが根強く残っている。自然界の総ての事物や現象には霊があり、さまざまな現象はその働きによるとする原始的宗教信仰である。特に農村部ではいくつかの農耕儀礼が古くから伝わっているが、多くはアニミズムに根ざしたものといわれる。例えば、稲の種まきの前には占い師が田んぼを訪れ、香をたき、悪霊を追い出すための祈りをする、田植えの日はお祭りとなり、農民がお祭り用のごはんを口にし、恵まれた天候が続くよう祈る。また、稲刈の時期が来れば、手のひらに入るほどの小刀で穂先を切る習慣がある。稲の穂には女神がいると信じられており、小刀を使うのは女神を驚かさないためのものだという。