当初は暫定的な業務代行として経営にあたっていた秦さんは、81年ルイ・ヴィトンジャパン設立にあたって正式に代表取締役として就任することとなったのです。それまで流迦業とは無縁であった秦さんの、経営コンサルタントならではの自由で大胆な発想がここで展開されました。まずはそれまで各デパートがパリから直接仕入れていたルイ・ヴィトン製品を日本支社で一旦すべて買い取り、改めてデパートの売り場を借り受けて販売するという方式を取ったのです。極めっきの改革はパリと日本との内外価格差を約1・4倍以内に設定し、為替に連動する変動価格制の導入。従来は正規ルートでもパリの2〜3倍で売られていた価格を一気に引き下げるという大胆な方法で適正価格を実現したのです。現在のルイ・ヴィトンジャパンの総売り上げを1000億円の大台に乗せた偉業の、まさにルーツがこの秦郷次郎の“決断”に集約されているのではないでしょうか。つい先日、秦さんはフランス政府から長年の功績に対してレジオン・ドヌール勲章を授与されました。現在、メガブランドの世界戦略の中核をなす日本市場における直営展開のモデル・ケースを、秦さんはパイオニアとして築き上げました。この授賞は至極納得いくものです。この構造改革なくして現在のブランドビジネスは存在しないといっても過言ではないのですから。